眼科心臓病の周辺領域
糖尿病、高血圧、高脂血症などの
疾患は、眼にも重大な合併症を
生ずることがあります
当院は心臓病専門病院として、循環器疾患と同時に糖尿病、腎不全、そして加齢性変化などを合わせもつ重症の方の治療を多く行っているため、眼疾患の合併が少なくありません。
なぜ心臓病センターに眼科があるの?
心臓病と糖尿病と眼には、密接な関係があります。
虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)、脳血管障害(脳梗塞)、末梢動脈疾患(下肢の血行障害)、などの動脈硬化性疾患を引き起こす基礎疾患として、糖尿病、高血圧、高脂血症などがあり、これらの疾患は眼にも重大な合併症を生ずることがあります。
「糖尿病網膜症がある人の25%に心臓の血管(冠動脈)に明らかな病変が認められ、そのうちの21%の人は手術等の治療(血行再建)が必要であった。これら治療が必要であった人の86%は自覚的な胸部症状が全くなかった」という報告や、「糖尿病のある人が心筋梗塞を発症したり、冠動脈の病気によって死亡したりする危険は糖尿病網膜症の発症や重症化と共に増す」という多数の海外の疫学調査の報告があります。
糖尿病のある方は、糖尿病網膜症の有無や冠動脈病変の有無について、検査を受けることをお勧めします。是非ご相談ください。
糖尿病の代表的な眼合併症は?
糖尿病網膜症
糖尿病による眼の合併症の代表的なもので、日本では常に成人の中途失明原因の第1または2位となっています。
初期から視力が低下することは少なく、末期にならなければ自覚症状が出ないため、眼科で眼底検査を受けて初めて発見される場合がしばしばあり、定期的に眼底検査を受けることが大切です。
糖尿病黄斑症
糖尿病網膜症と関連の深い病態で、物を見るのに最も大切な「黄斑」という部分に水膨れができるなどして視力が低下しますが、治療が難しいのが特徴です。
糖尿病網膜症がそれほど重症でない人にも発症することがあります。
その他の眼の病気は?
白内障
高齢者に多い眼の病気の一番は、何と言っても白内障です。これは眼の中にある水晶体という本来透明である組織に濁りが生じる状態で、程度の差はありますが、すべての人に起きる変化です。
白内障の主な症状は視力の低下で、裸眼ではもちろん、眼鏡をかけてもはっきり見えなくなります。水晶体の濁り方には個人差がありますので、目がかすむ、まぶしい、涙がでやすいなど、人それぞれ様々な症状があります。
白内障が進行した場合は、手術により水晶体の濁りを取り除き、眼内レンズという人工のレンズに入れ替えることが治療となります。40代から90代まで幅広い年齢層の方に受けていただける手術です。
後発白内障
白内障術後しばらくたってから、視力が落ちたり、かすんで見えたりする状態です。
当科では後発白内障に対するレーザー治療も行っております。術直後はよく見えていたのに最近かすみが気になるなど、見え方などで気になることがある方はどうぞお気軽にご相談ください。
緑内障
緑内障も初期の変化は自覚しにくく、末期になるまで自分で気づくことはないため、眼科を受診して初めて判明することの多い疾患です。
緑内障では眼圧が高いのが一般的と考えられがちですが、日本人では眼圧が正常範囲にあっても緑内障の症状を示す正常眼圧緑内障が他国に比較して多いと言われています。
放置すれば徐々に視野が欠けて見えにくくなりますが、一度失った視野は取り戻すことができないため、進行させないための地道な治療が大切です。
加齢黄斑変性
視力にとって最も大切な網膜の中心部を黄斑といいますが、この部分が障害されるのが加齢黄斑変性です。
最初はゆがんで見える、暗く見える、視野の中央がかすんでよく見えない、といった症状ですが、病気の進行とともに徐々に視力が低下します。
網膜の奥の脈絡膜に健康な状態では存在しない異常血管(新生血管)が発生し、この血管が網膜の黄斑部に伸びてくるタイプ(滲出型)では、網膜に出血や腫れ(浮腫)を起こして急速に視力が低下することがあります。
網膜静脈閉塞症
網膜静脈閉塞症は、網膜の静脈がつまって血液が流れなくなる病気です。
網膜の静脈がつまると、網膜に出血を生じて視野狭窄が起こったり、網膜に腫れ(浮腫)を生じて網膜の機能が低下したりします。特に網膜の中心部(黄斑)に腫れが起こると視力が著しく低下します。
静脈の枝が閉塞した場合を網膜静脈分枝閉塞症、静脈の根元が閉塞した場合を網膜中心静脈閉塞症といいます。網膜の障害は分枝閉塞では部分的ですが、中心静脈閉塞では影響が網膜全体に広がります。
高血圧などの動脈硬化を起こす病気や、糖尿病や高脂血症などの血液の粘性が上がる病気などと深い関連のある病気です。
当科での抗VEGF療法
脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性や病的近視、糖尿病や網膜静脈閉塞による黄斑浮腫に対して、眼球の中に抗VEGF薬を注入する(硝子体注射)治療法です。
これらの疾患では、眼の中にある血管内皮増殖因子(VEGF)という物質が、新生血管を成長させたり、既存の血管から血液の成分を漏れやすくして腫れを起こしたりしています。
抗VEGF薬はVEGFの働きを抑える薬剤です。
当科では岡山大学病院の専門医師の協力を得て、診察と治療を行っています。
私たち眼科スタッフは病客さまに安心して治療を受けていただけるよう、日々努力をしております。まずは眼底検査から受けてみてはいかがでしょうか。
心臓病のある方もない方も、どなたでも受診を歓迎しております。
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